2007'07.01.Sun
(……馬鹿だな)
息が苦しくても、酸素不足で目の前が霞んできても、自分を見下ろすスザクの瞳はよく見えた。
首に回された指の力はそれほど強くない。だがさすが軍人、力を入れずとも呼気を絶つ方法を良くわかっている。
息を吸ってもほんの僅かなものしか取り込めない。言葉を発したくても吐き出す息がない。
(スザク)
ルルーシュを責める言葉を叫ぶ彼の表情は、今まで見たことのないほど怒気に満ちていた。
(お前は、ほんとうに、馬鹿だな)
許さない、生きて贖え、楽になろうだなんて傲慢だ、と。
吐き出す言葉は、きっと彼を、彼自身を追い詰めている。
(馬鹿だ)
ルルーシュも、スザクも。
罪を重ね、血に塗れ、大切な相手を欺いてまで。そうして築いたものはすべて壊れ、もう目の前の互いしか残っていない。
白兜――ランスロットと呼ばれるあの機体を自爆させ、軍の命に背いた彼は、きっともう戻れないだろう。
そして自分も、黒の騎士団も大事な光も失った今、戻るところなどどこにもない。
(あたたかい)
未だ何かを叫んでいるスザクの瞳から、あたたかい水が落ちてくる。怒りに眉を吊り上げ、目を大きく見開いて。瞬きもしない、その、翡翠から。
手を伸ばし、彼の頬に触れる。真下に落ちてくる水滴を拭うことはできなかったが、体温を分け与えることはできた。遠い昔、二人の光が、教えてくれた涙に効く魔法。
「……ルルーシュ……ッ」
スザクの顔が歪む。素顔を知っても、頑なにゼロと呼び続けていたくせに。微かに笑みを浮かべ、唇の動きだけでスザク、と彼を呼んだ。
だが、もう、腕を持ち上げている力がない。ぱたり、と地に落ちた腕。そのまま意識が沈むかと思われたそのとき、喉がひゅっと鳴り、肺が急に働き始めた。止められていたそのときよりも苦しい。胸が痛い。咳き込みあまりの苦しさに転がりそうになった身体は、まだ彼の体温に触れていた。
(ああ)
捕まって、捕まえられているのはどちらだろう。
「………ッ」
―――いつの間にか降り始めた雨が、雷を伴いすべての音を掻き消した。
というわけで妄想劇場ルルーシュ版。
あー、原稿に躓いているので、こういう短い話を書くと気分転換になります。
息が苦しくても、酸素不足で目の前が霞んできても、自分を見下ろすスザクの瞳はよく見えた。
首に回された指の力はそれほど強くない。だがさすが軍人、力を入れずとも呼気を絶つ方法を良くわかっている。
息を吸ってもほんの僅かなものしか取り込めない。言葉を発したくても吐き出す息がない。
(スザク)
ルルーシュを責める言葉を叫ぶ彼の表情は、今まで見たことのないほど怒気に満ちていた。
(お前は、ほんとうに、馬鹿だな)
許さない、生きて贖え、楽になろうだなんて傲慢だ、と。
吐き出す言葉は、きっと彼を、彼自身を追い詰めている。
(馬鹿だ)
ルルーシュも、スザクも。
罪を重ね、血に塗れ、大切な相手を欺いてまで。そうして築いたものはすべて壊れ、もう目の前の互いしか残っていない。
白兜――ランスロットと呼ばれるあの機体を自爆させ、軍の命に背いた彼は、きっともう戻れないだろう。
そして自分も、黒の騎士団も大事な光も失った今、戻るところなどどこにもない。
(あたたかい)
未だ何かを叫んでいるスザクの瞳から、あたたかい水が落ちてくる。怒りに眉を吊り上げ、目を大きく見開いて。瞬きもしない、その、翡翠から。
手を伸ばし、彼の頬に触れる。真下に落ちてくる水滴を拭うことはできなかったが、体温を分け与えることはできた。遠い昔、二人の光が、教えてくれた涙に効く魔法。
「……ルルーシュ……ッ」
スザクの顔が歪む。素顔を知っても、頑なにゼロと呼び続けていたくせに。微かに笑みを浮かべ、唇の動きだけでスザク、と彼を呼んだ。
だが、もう、腕を持ち上げている力がない。ぱたり、と地に落ちた腕。そのまま意識が沈むかと思われたそのとき、喉がひゅっと鳴り、肺が急に働き始めた。止められていたそのときよりも苦しい。胸が痛い。咳き込みあまりの苦しさに転がりそうになった身体は、まだ彼の体温に触れていた。
(ああ)
捕まって、捕まえられているのはどちらだろう。
「………ッ」
―――いつの間にか降り始めた雨が、雷を伴いすべての音を掻き消した。
というわけで妄想劇場ルルーシュ版。
あー、原稿に躓いているので、こういう短い話を書くと気分転換になります。
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