2008'01.31.Thu
連載中の『smile in your face』ですが、続きを書き始めているのになかなかその先を書けずに悶々としています(笑)
ので、とりあえず書いてあるところまでをここにアップ…。
気になるぞーという方は、よろしかったら見てやってくださいませ。
…あ、ルルーシュは出てきませんです;
ので、とりあえず書いてあるところまでをここにアップ…。
気になるぞーという方は、よろしかったら見てやってくださいませ。
…あ、ルルーシュは出てきませんです;
*-*-*-*-*
枢木スザクという人物についての、周りの見解。
空気が読めない、お人好し。
異常なほど正義感が強く、身体能力が高い。喧嘩の仲裁に入ることも多々。
責任感がある。よく笑う。割とすぐ泣く。怒ることは滅多にない。
女性に優しい。フェミニスト。
――ランペルージ兄妹に、滅法弱い。
いつだったか、リヴァルに指折りされながら告げられたその言葉に、スザクはただ笑った。
途中までのものはどれもそうかなあと首を捻るものばかりだったのだが、最後のひとつは自分でも自覚していることだったから。
「呆れた男だな。騎士に立候補したって?」
今週二度目の夜中の呼び出しは、いつもと違い少し距離を取った場所でだった。
普段はアパートの近くにある公園か、もう少し先にある橋の下のどちらかだった。それはスザクがその辺でいいだろうと指定したからというのが大元の理由だ。
呼び出されると、何だかんだ毎回割と長引くその邂逅。だが相手が場所変えを提案してこないので、このままでいいのかと思っていたのだが……やはり多少文句はあったらしい。
目立つことは避けろと言っていたくせに、今日はアパートから自転車で30分以上かかる場所にあるファミレスだった。
「そうしたいと思ったんだ」
スザクが答えると、相手が口端を吊り上げる。目深に被られた帽子の奥、鋭く光る瞳がスザクを射抜いた。
その唇から言葉が発せられる前に、スザクは再度口を開く。
「君が何が言いたいかは、だいたい想像できるよ」
「ふん、どうだか」
取り合う気のなさそうな、僅かに憤慨した様子にスザクは微笑う。
日付が変わって2時間以上経つ夜中だというのに、訪れる客は減ることがない。自分たちと同じくらいの学生が多く、話し声も賑やかだ。彼らが騒いでくれるおかげで、自分たちが何の話をしていようと気に留める人はいなかった。
以前はこんな風に夜中に騒ぐ人々を見ることなどなかった……そんな余裕もなかったし、おそらくそれほど治安も良くなかった。
「で?」
そんなことを考えていたら、目の前の相手から先を促された。
え? と目を瞬かせる。
「あいつは何と答えた?」
「ああ、……」
「言わずとも察しはつくがな。記憶が欠けていたって、大元の人間は変わらないんだ。あいつが頷くわけがない」
彼のことを知っている言葉は、それだけでスザクの心を抉ってゆく。自分の知らない彼の心を、目の前の相手は知っている。自分が失ってしまった彼の心を。
「馬鹿言うな、って一刀両断だったよ」
だろうな、と返る言葉は感情を含まない声だった。
スザクはその時のルルーシュの顔を思い出してため息をついた。友達を護衛になどしない、と怒ったような眼差しを向けてきた彼。
うまくいかないな、と思う。スザクはただルルーシュを守りたいだけだ。傍にいて、自分が守ってやりたいだけ。
けれどそれは、そうしないと不安だから、なのだ。
「皇族の騎士がどういうものなのかを延々説かれたよ。ただの一学生ができるようなものじゃない、って。僕は幼い頃から訓練は受けてるって言ったんだけどダメだった。彼は、僕の能力を知らないから、」
言いかけて、スザクは首を振る。
「忘れてしまっているから、目の前で立証するしかないかなって思ったけど、そうもいかない。この世界は、平和だから……彼に力を見せるには、彼を守ることでしか……彼を危険に晒すことでしか、できないんだ」
ふうん、と興味のなさそうな相槌。
スザクは少しだけ目元をやわらげた。おそらくこの相手に、スザクは嫌われている。嫌われているのは間違いないと思うのに、時々、こうして気遣うような素振りを見せる。
感情を持たぬ人形ではないのに、悟らせないように、知られぬように、声音の色を失くす。無感動のように見えて、その実、敏感にこちらの心の波をしっかりと捉えているのだ。だからこそ、己の感情を悟らせるようなことはしない。
今回のことだけを言えば、スザクが落胆しているのが明らかな状態で憐憫をのせた声を聞かせるようなことはしない。スザクがそれを望まないからだ。憐憫で変わるものなど何もないからだ。
しかし、だ。ならば、この相手の性格を考えたら嘲りを聞かされてもおかしくないというのに、それをしないのは――おそらく、スザクを気遣っているから。
……どん底まで叩き落してやろうと思わぬくらいには、嫌われていないということなのだろうか。
「無神経だな、お前は」
だが、言いたい事を誤魔化したりしない。きっぱりと斬って捨てるその切っ先の鋭さに、スザクは毎回負けている気がする。
「あいつにとって、お前が『騎士』になることほど残酷なことはない」
「…………」
「覚えているとかいないとか、そういうことを抜きにしても、だ。幼馴染、友人、親友――あいつの大事にする肩書きを持つお前が、その立場を捨てて臣下になるなどと」
ルルーシュに似ているな、と思ったのはいつだっただろう。もう忘れてしまった。こうして夜中に会うようになってからまだ半年ほどしか経っていないのに、もう何年もこうして会っているような気がする。
「……、それは」
「ブリタニアの国是は甘くないぞ。お前が知り得ている知識は二度と使えない。どうしてだかは説明する必要もないだろうが」
「ああ……わかってる」
反論できないのは、スザクに負い目があるからだ。
目の前の相手にも、ルルーシュにも。
「本当に……呆れた男だな、枢木スザク」
ため息をつき、心底呆れたと再度言われてスザクは苦笑した。
「わかってるさ。本当に、わかってるんだ。僕が彼の隣にいること自体、きっと彼を傷つけることになるんだろうから」
「…………記憶が戻れば、そうなるだろうな」
しばらくの間をおき、答えが返る。
『記憶が戻れば』――その言葉を聞くたびに、スザクは心のどこかに痛みを覚える。
スザクとルルーシュの共通視する記憶は、優しいものが多い。共に笑いあった。同じ時を過ごせた。……時折唇を重ねて、肌を触れ合わせた。同じ空気を共有していた、そんな幸せで優しい記憶。
だがそれに伴って、彼と自分との関係の、決定的な亀裂もその記憶の中にある。
「君はいつも『記憶が戻れば』と言うけれど……その可能性はどれくらいある?」
「最初に言っただろう。お前次第さ」
声音の色をまた消してそう答えた相手に、スザクは小さく息をつき、手元のコーヒーカップに視線を下げる。手を添えただけで表面が漣立ち、映っていた自分の顔もぐにゃりと歪む。
あのとき言われた言葉は、簡潔明瞭だった。
同じ事をするな、と。ただそれだけ。
例えば、失ってしまった記憶と同じ場所に行って、同じ行動を取る。それがルルーシュの中でデジャヴと認識され記憶を紐解く切欠となる。
つまりは。スザクが以前ルルーシュにしたことをなぞるな、と……そういうことだ。あのときと今とは立場も関係も違うのでそれほど難しいことではなかったが、すべてを覚えているわけではないので1日が終わるまで緊張する。いつどこでその症状が出るかわからない。自分が取った行動のどれが、ルルーシュの中で切欠になるか見当がつかないのだ。
騎士になりたいと言ったのは、もしかしたらそんな不安からだったのかもしれなかった。
友人と言う関係ではなく主従の関係になってしまえば、以前とは違う行動を取るしかない。彼の傍にいたいだけという理由はもちろん本当だ。けれど、そんな仄暗い感情が奥底にあったことは否定できなかった。
「――おまえは」
不意に声をかけられて、スザクはコーヒーカップから目を上げる。
「一体、何を望んだ?」
「何を?」
口許だけで笑みを作り、スザクは目を細めた。
何度も会って色々な話をしてきたが、こんな問いは初めてだ。……いや、初めてであることが意外だった。
もっと早く問いかけられていても良かったことだ。
「何を望む? ルルーシュに。この世界に」
スザクのたった一人の共犯者。
記憶の欠片が散らばっててしまったルルーシュの元の姿を、唯一知る相手。
あのとき望んだことは、たったひとつだけだった。
『どうして……、何故……!』
目の前が赤く染まったあのとき、スザクは願った。
『こんな終わり方、俺は認めない』
終わらせない。終わらせてはいけない。
こんな形で彼と離れてはいけない。
『……だから……』
生きろ、と。
ただそれだけを願った。
「……それだけだよ、C.C.」
わざと呼ばずにいた名を呟くと、彼女はあからさまに顔をしかめた。
枢木スザクという人物についての、周りの見解。
空気が読めない、お人好し。
異常なほど正義感が強く、身体能力が高い。喧嘩の仲裁に入ることも多々。
責任感がある。よく笑う。割とすぐ泣く。怒ることは滅多にない。
女性に優しい。フェミニスト。
――ランペルージ兄妹に、滅法弱い。
いつだったか、リヴァルに指折りされながら告げられたその言葉に、スザクはただ笑った。
途中までのものはどれもそうかなあと首を捻るものばかりだったのだが、最後のひとつは自分でも自覚していることだったから。
「呆れた男だな。騎士に立候補したって?」
今週二度目の夜中の呼び出しは、いつもと違い少し距離を取った場所でだった。
普段はアパートの近くにある公園か、もう少し先にある橋の下のどちらかだった。それはスザクがその辺でいいだろうと指定したからというのが大元の理由だ。
呼び出されると、何だかんだ毎回割と長引くその邂逅。だが相手が場所変えを提案してこないので、このままでいいのかと思っていたのだが……やはり多少文句はあったらしい。
目立つことは避けろと言っていたくせに、今日はアパートから自転車で30分以上かかる場所にあるファミレスだった。
「そうしたいと思ったんだ」
スザクが答えると、相手が口端を吊り上げる。目深に被られた帽子の奥、鋭く光る瞳がスザクを射抜いた。
その唇から言葉が発せられる前に、スザクは再度口を開く。
「君が何が言いたいかは、だいたい想像できるよ」
「ふん、どうだか」
取り合う気のなさそうな、僅かに憤慨した様子にスザクは微笑う。
日付が変わって2時間以上経つ夜中だというのに、訪れる客は減ることがない。自分たちと同じくらいの学生が多く、話し声も賑やかだ。彼らが騒いでくれるおかげで、自分たちが何の話をしていようと気に留める人はいなかった。
以前はこんな風に夜中に騒ぐ人々を見ることなどなかった……そんな余裕もなかったし、おそらくそれほど治安も良くなかった。
「で?」
そんなことを考えていたら、目の前の相手から先を促された。
え? と目を瞬かせる。
「あいつは何と答えた?」
「ああ、……」
「言わずとも察しはつくがな。記憶が欠けていたって、大元の人間は変わらないんだ。あいつが頷くわけがない」
彼のことを知っている言葉は、それだけでスザクの心を抉ってゆく。自分の知らない彼の心を、目の前の相手は知っている。自分が失ってしまった彼の心を。
「馬鹿言うな、って一刀両断だったよ」
だろうな、と返る言葉は感情を含まない声だった。
スザクはその時のルルーシュの顔を思い出してため息をついた。友達を護衛になどしない、と怒ったような眼差しを向けてきた彼。
うまくいかないな、と思う。スザクはただルルーシュを守りたいだけだ。傍にいて、自分が守ってやりたいだけ。
けれどそれは、そうしないと不安だから、なのだ。
「皇族の騎士がどういうものなのかを延々説かれたよ。ただの一学生ができるようなものじゃない、って。僕は幼い頃から訓練は受けてるって言ったんだけどダメだった。彼は、僕の能力を知らないから、」
言いかけて、スザクは首を振る。
「忘れてしまっているから、目の前で立証するしかないかなって思ったけど、そうもいかない。この世界は、平和だから……彼に力を見せるには、彼を守ることでしか……彼を危険に晒すことでしか、できないんだ」
ふうん、と興味のなさそうな相槌。
スザクは少しだけ目元をやわらげた。おそらくこの相手に、スザクは嫌われている。嫌われているのは間違いないと思うのに、時々、こうして気遣うような素振りを見せる。
感情を持たぬ人形ではないのに、悟らせないように、知られぬように、声音の色を失くす。無感動のように見えて、その実、敏感にこちらの心の波をしっかりと捉えているのだ。だからこそ、己の感情を悟らせるようなことはしない。
今回のことだけを言えば、スザクが落胆しているのが明らかな状態で憐憫をのせた声を聞かせるようなことはしない。スザクがそれを望まないからだ。憐憫で変わるものなど何もないからだ。
しかし、だ。ならば、この相手の性格を考えたら嘲りを聞かされてもおかしくないというのに、それをしないのは――おそらく、スザクを気遣っているから。
……どん底まで叩き落してやろうと思わぬくらいには、嫌われていないということなのだろうか。
「無神経だな、お前は」
だが、言いたい事を誤魔化したりしない。きっぱりと斬って捨てるその切っ先の鋭さに、スザクは毎回負けている気がする。
「あいつにとって、お前が『騎士』になることほど残酷なことはない」
「…………」
「覚えているとかいないとか、そういうことを抜きにしても、だ。幼馴染、友人、親友――あいつの大事にする肩書きを持つお前が、その立場を捨てて臣下になるなどと」
ルルーシュに似ているな、と思ったのはいつだっただろう。もう忘れてしまった。こうして夜中に会うようになってからまだ半年ほどしか経っていないのに、もう何年もこうして会っているような気がする。
「……、それは」
「ブリタニアの国是は甘くないぞ。お前が知り得ている知識は二度と使えない。どうしてだかは説明する必要もないだろうが」
「ああ……わかってる」
反論できないのは、スザクに負い目があるからだ。
目の前の相手にも、ルルーシュにも。
「本当に……呆れた男だな、枢木スザク」
ため息をつき、心底呆れたと再度言われてスザクは苦笑した。
「わかってるさ。本当に、わかってるんだ。僕が彼の隣にいること自体、きっと彼を傷つけることになるんだろうから」
「…………記憶が戻れば、そうなるだろうな」
しばらくの間をおき、答えが返る。
『記憶が戻れば』――その言葉を聞くたびに、スザクは心のどこかに痛みを覚える。
スザクとルルーシュの共通視する記憶は、優しいものが多い。共に笑いあった。同じ時を過ごせた。……時折唇を重ねて、肌を触れ合わせた。同じ空気を共有していた、そんな幸せで優しい記憶。
だがそれに伴って、彼と自分との関係の、決定的な亀裂もその記憶の中にある。
「君はいつも『記憶が戻れば』と言うけれど……その可能性はどれくらいある?」
「最初に言っただろう。お前次第さ」
声音の色をまた消してそう答えた相手に、スザクは小さく息をつき、手元のコーヒーカップに視線を下げる。手を添えただけで表面が漣立ち、映っていた自分の顔もぐにゃりと歪む。
あのとき言われた言葉は、簡潔明瞭だった。
同じ事をするな、と。ただそれだけ。
例えば、失ってしまった記憶と同じ場所に行って、同じ行動を取る。それがルルーシュの中でデジャヴと認識され記憶を紐解く切欠となる。
つまりは。スザクが以前ルルーシュにしたことをなぞるな、と……そういうことだ。あのときと今とは立場も関係も違うのでそれほど難しいことではなかったが、すべてを覚えているわけではないので1日が終わるまで緊張する。いつどこでその症状が出るかわからない。自分が取った行動のどれが、ルルーシュの中で切欠になるか見当がつかないのだ。
騎士になりたいと言ったのは、もしかしたらそんな不安からだったのかもしれなかった。
友人と言う関係ではなく主従の関係になってしまえば、以前とは違う行動を取るしかない。彼の傍にいたいだけという理由はもちろん本当だ。けれど、そんな仄暗い感情が奥底にあったことは否定できなかった。
「――おまえは」
不意に声をかけられて、スザクはコーヒーカップから目を上げる。
「一体、何を望んだ?」
「何を?」
口許だけで笑みを作り、スザクは目を細めた。
何度も会って色々な話をしてきたが、こんな問いは初めてだ。……いや、初めてであることが意外だった。
もっと早く問いかけられていても良かったことだ。
「何を望む? ルルーシュに。この世界に」
スザクのたった一人の共犯者。
記憶の欠片が散らばっててしまったルルーシュの元の姿を、唯一知る相手。
あのとき望んだことは、たったひとつだけだった。
『どうして……、何故……!』
目の前が赤く染まったあのとき、スザクは願った。
『こんな終わり方、俺は認めない』
終わらせない。終わらせてはいけない。
こんな形で彼と離れてはいけない。
『……だから……』
生きろ、と。
ただそれだけを願った。
「……それだけだよ、C.C.」
わざと呼ばずにいた名を呟くと、彼女はあからさまに顔をしかめた。
PR
Post your Comment
NEW
(04/09)
(11/15)
(11/11)
(11/04)
(10/28)
(10/21)
(10/20)
twitter
適当なことばかり呟いています。@歓迎。
@sakura_pm からのツイート
@sakura_pm からのツイート
SEARCH
CATEGORIES
RECOMMEND
LINK