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咲良の徒然気まま日記。 ゲームやらアニメやら漫画やらの感想考察などをつらつらと。 しばらくは、更新のお知らせなどもここで。

2025'04.27.Sun
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2007'01.25.Thu
 ……ソレがそういうもの、という事は、キラにだってわかっていた。芸能界に足を踏み入れてもう何年経つのか。毎日毎日を過ごすことに必死で、色々なことを考える余裕はなかった。それでもやはり、この世界にいるから……一般の人よりは大人なのではないだろうか。だが、だからといって、それを実践するかどうかと言うのはまた別の話で。
「あ~~~、駄目だ、混乱してる……」
 ごんごんごん、と自分の頭を数回叩いて、キラは目の前の枕に突っ伏した。枕の下にそのブツをしまいこむ。四角いフィルムに包まれた、広げると筒状になっているそれ。先程から考えが行ったり来たり、自分が答えを出したい問題には追いつくが追い越せず。考えれば考えるほど見当違いの方向に考えがいってしまうのは……やはりキラが混乱しているからだろう。
「いや、そもそも、まだ何も言われてないしっ」
 ばんばんばん。今度はベッドのシーツを叩く。埃が舞うからやめろとお小言を言う同居人兼幼馴染兼親友兼……恋人はここにはいない。
「……ッ!」
 自分で考えておいて、恋人、という単語にキラは真っ赤になって息を止めた。本当にそういう風に自分たちのことを言っていいのか、キラには未だにわからない。確かに、成り行きとはいえキスをして、告白もした。お互いに同じ気持ちだったこともわかった。それからも、毎日一回以上の口付けは交わしていて。
(……だから)
 この関係が、そう呼んでいいものなら。やはり。
(いつかは……っていうか、たぶん、もう……)
 ここ数日、触れ合うたびにアスランの様子がおかしい、のだ。軽く触れるだけのキスは卒業して、拙いけれど舌を絡める深いキスを覚えた。その頃から、キスをした後のアスランの様子が少しおかしい。いつもの優しい彼には違いないけれど、キラと目を合わせる回数も少なく、割と早く自室に行ってしまう。その理由に思い当たったのは、それが3度続いた時だった。
 口付けの間に、キラがそっと彼の腰に手を回した時。彼も同じようにキラの髪に手を触れてきて――その瞬間、ぞくっと背筋をかけ抜けた何かがあった。痺れる様な甘い疼きが腰の奥に広がって、小さな熱の塊になって。唇を離してから、キラが赤くなってへたりこむと、アスランもキラの肩に額をつけたままじっと動かなくなった。……キラが耐えていたアレに、おそらくアスランも耐えていたのだ。
 だから。乏しい知識の中から、彼との新しい関係を、考えてみたのだけれど。
「うううー」
 他でもない、アスラン相手に、どうこうできる自信がない。かといって、彼にすべてを任せてしまう勇気もない。見慣れている彼の肢体が、最近とても直視し難くて困っているくらいなのだ。こんな風に悶々としているから、余計なんだろうと思う。一度思い切って肌を合わせてしまえば、こんなに意識せずにすむのではないかとも思う。それはなんだか投げやりな考えだが。
(……そうじゃなくて……)
 キラはきゅっと唇を噛む。
(たぶん……アスランに触れたいのは、僕、なんだ)
 カメラに向かって、挑発するような色づいた視線やポーズを撮る彼。雑誌の抱かれたい男ランキングに名前が載るようになって、アスランは前にも増して男の色気を前面に押し出してきている。事務所側の要望もあってだが、どうも彼自身満更じゃない様子で。
 ……だから、誌面ではなく、ブラウン管の奥でもなく、生身の彼を……その全てを、独り占めしたいから。
(独占欲なんて……あったんだ僕)
 以前の自分からは考えられないことだ。アスランの全てが欲しい、だなんて。
(欲し……い……って)
 頬は熱くなるばかりだった。
 そう、だから……彼に、……して欲しいのだ。自分は。
 丸くなってきゅっと身体に力を入れる。彼は一体どんな風に他人を抱くのだろう。
「アスラン……」
 ぽつりと呟いて、更に力を入れる。――と。
「ん?」
 背後から声が聞こえて、キラはぎょっと身体を起こした。
「ア、ア、ア、アスランッ!?」
「ああ、ただいま。……って何そんなに驚いて……」
 ドアの向こうに立っているのはアスラン本人だった。考えに没頭していて扉の開く音に気付かなかったらしい。しゅわしゅわしゅわと顔に血が上る。あっという間に茹蛸状態になったキラをアスランがきょとんと見つめ、次いで口端を吊り上げた。
「なに、キラ。ひとりのオフがつまらなかった?」
「う……まあ、うん……」
 アスランがドアを閉める。密室になった自分の部屋。……何だか息苦しい。
「そんなに寂しかった?」
「う、や、……違っ……」
 ベッドに乗り上げたアスランの膝が、キラとの距離を縮める。さわりと背を撫で上げる彼の手のひらに過剰に反応してしまう。いつもの冗談のつもりなのだろうが、今のキラにはきつかった。
「キラ?」
 顔を覗き込み、アスランが唇を近づけてくる。真っ赤な顔のまま彼からのキスを受けて、そっと目を合わせる。透き通ったグリーンの瞳がキラを捉え、僅かに細められて。
「やっぱりな。何かおかしいな、とは思ってたんだけどね」
「え」
 アスランがキラの唇にもう一度軽くキスをして離れる。
「こんなもの、どこから……」
 呟きながら手のひらを眺めている彼の視線を追って――キラはぎゃあっと叫び声をあげた。
「うわっ、なんでっ?」
「キラが何か隠したのが見えたから。一体誰にもらったんだ? それとも自分で買った?」
「買わないよっ! そ、それはっ……この間、共演した、人に……」
「ああ、あの金髪ロンゲの人? キラにちょっかいだしまくってた? そういえば終わった後呼び出されてたよなキラ」
「う……そう、です……」
「ふうん? それをすんなりもらってきたんだな、おまえは」
「……アスラン怖い……」
「怖い? 怒ってるからな」
 怒ってる。その言葉にびくっとキラは後ずさった。
「これをキラにくれたってことは、あの人がキラに何か妙な感情をもってるからだろ。そうじゃなくたって傍から見てて明らかにおかしかったんだ、お前も少しは警戒しろ!」
「……ハイ……」
 こういう時のアスランには逆らわないほうがいい。キラはおとなしく頷いた。
「これもらって、どうしろって? 何か言われたか?」
「ううん、何も……あ、今度食事にって誘われたような」
「絶対行くな」
 すぱっと切り捨てたアスランに、キラはもう一度ハイ、と頷く。そしてそこで、あることに気付いた。アスランが怒っているのは……これは……。
「アスラン」
「何」
「……えっと……」
 何と言っていいかわからなかったから、とりあえずぎゅうっと抱きついてみる。そう来るとはおもわなかったのか、アスランが驚いたように目を瞬かせた。
「それ、アスランにあげるよ」
「……はあ?」
 顔を彼の肩口に伏せたまま、キラはもごもごと言葉を紡いだ。アスランは訝しげな顔で、もう一度手の中のソレを見たようだった。
「――……アスランに、あげる」
 意味が通じなくてもいいと思って言った台詞だった。呟いて、キラは顔を上げる。だが彼の顔を視界に入れないうちに背中をベッドに叩きつけられた。
「わっ、なっ」
「キラ」
「へ」
 アスランが自分を見下ろしていた。彼の唇がまた自分のそれに触れて。首筋にかかる彼の髪がくすぐったいな、などと考えていたら、今度はその場所にアスランの唇が移動した。
「っ?」
 首筋から、鎖骨へ。ちゅ、と口付け微かに吸い付いてくる唇。ぞぞっと覚えのある感覚が腰に集まって、キラは慌てて彼の胸を押した。
「アスラン、ちょっと」
 冗談のように茶化すつもりが、目を合わせたアスランの表情に言葉を呑み込む。
「……くれるんだろ?」
 初めて対峙した。アスランの、挑発する、欲に濡れた瞳。
(なにこの展開……っ)
 心臓がばくばくいっている。身体が動かない。言葉もうまく紡げなくなった。
(そりゃ、あげる、って……そういう意味も含んでたけど)
 キラからの返事を待っているのか、アスランはそのまま動かずにいる。でもやはり、手も足も口も動かなかった。動いているのは先程から壊れてしまうのではないかというほど強く早く鐘を打ち続ける心臓だけ。視線だけは逸らさずにいると、何故か目尻からぽろっとひと粒、涙が零れ落ちた。
「――――」
 アスランが僅かに目を見開く。キラも驚いて瞬きを繰り返した。涙? 何故?
「……冗談だよ。泣くほど怖かったか?」
 ふっといつもの困ったような笑みを浮かべ、アスランが身を起こした。そうじゃない、と言いたかったが言葉が出ない。離れる背中に反射的に抱きついて、腕に力をこめる。
「あのさ、キラ……」
 言いかけた何かを途切れさせ、アスランが間をおいた。ふうー、と深い溜息。
「とりあえず。キラがそういうこと考えてたのはよーくわかった。人並みに興味があってよかったよ」
「……へ」
「コレは俺がもらっておくから。……然るべき日まで、な」
「あ?」
 然るべき……日?
 内容を理解するより早く、キラの身体は引き剥がされて、再びベッドに転がされていた。けれど、今度は圧し掛かられるのではなく。
「っぎゃー! なにっ、ちょっ、アスランっ! くすっ……くすぐった……っ、あはははは!」
「自分のツメの甘さを少しは反省しろ!」
「はんせ……っ、わかった、わかったからー! 僕が悪かっ……」
 何だかよくわからないまま、ぐったりするまでくすぐられて、結局そのブツはアスランの手に渡って。
 いつだかわからない、『然るべき日』まで、封印されたのだった。

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