2008'02.25.Mon
*-*-*-*-*-*
クリスマスって何だか浮かれるよね。
そう呟いたキラを、彼はとても不思議そうに眺めてきた。
「何で」
「何でって……イルミネーションとか、パーティとか、チキンとか、ケーキとか、プレゼントとか」
ベッドにごろごろしつつそう答える。アスランはすべてを頭に思い描いているのかしばし上方を見て黙り、それから小さく笑う。
「パーティがしたかった?」
「そうじゃないけど……」
クリスマスイヴもクリスマス当日も仕事だと言われたのはつい先ほどのことだ。
この時期になると特番も多いし年末に向けてタレントたちは忙しくなる。
当然クリスマスも暮れも正月もないに等しいわけで。それが毎年のことだとわかっているのに、今年はさすがにキラも拗ねたくなっていた。
去年までは、仕事が入っていると言ったって昼間だけだった。夜は何もなくて、マネージャーからのプレゼントケーキを手に家に帰ったものだ。
それなのに。
「今年……アスランと、……初めてのクリスマスなのに」
枕に口許を埋め、ぼそぼそと答える。
クリスマス自体は初めてじゃない。でも、アスランと、そういう関係になってからの、初めてのクリスマスなのだ。
どこかに行きたいとか、盛大なパーティをしたいとか、そんなのじゃない。
ただ一緒にケーキを食べて、いつもは飲まないシャンパンでも飲んで、少しだけでいいからクリスマス気分を味わいたかった。
「キーラ」
デスクで端末を弄っていたアスランが、苦笑交じりで立ち上がった。
キラが懐いているベッドに腰かけ、まだ少し湿っているキラの髪を撫でてくる。
「仕方ないとか、言わないでよね」
アスランが言いそうな台詞だったから、キラは先回りしてそう牽制した。
仕事なんだから仕方ない。当たり前のことだけれど、そんな風に片付けて欲しくなかった。
「言わないよ」
そう呟くアスランの顔はキラからは見えない。
「確かに、深夜の生放送はキツイよな」
「……別に仕事が嫌なんじゃないよ」
うん、わかってる、とアスランは頷いてくれた。その声があまりにも優しくて、ああ甘やかされてるなとキラは目を閉じた。
どうしてこう、自分はいつも些細なことで拗ねてしまうのだろう。情けないと毎回反省するのに、いつも同じことを繰り返す。キラが拗ねてアスランが宥めて、妥協案を提案してくれて。
「ひとつ、訊いていい? キラ」
「……なに?」
髪を梳く指先が、さわりと耳元を撫で上げて行く。
「仕事が嫌じゃないのはわかった。じゃあ、何が嫌なんだ?」
「…………」
嫌というわけじゃない。
どう答えたものかとキラがそのまま沈黙していると、アスランが問いを変えてきた。
「うーん、じゃあ、キラは、クリスマスに何がしたかった?」
何が。
キラは閉じていた目を開き、数度瞬きをした。
ゆっくりと、唇を動かす。
「一緒に、ケーキ食べて、シャンパン飲んで」
「ああ」
「できたら、チキンも食べたいし」
「それから?」
「……せっかくだから、イルミネーションを見たりとか」
「いいな。あとは?」
「あとは、……」
アスランに、プレゼントだって買ってあげたい。
くっついて、じゃれ合って、幸せな気持ちのまま寝てしまえたらいい。
最後の言葉は本当に小さな声だったが、アスランはちゃんと聞き取ってくれたようだった。
「キラ」
うつ伏せのまま枕を抱え、顔をあげようとしないキラの上に彼が被さるように乗ってくる。反射的にぐえ、と色気のない声が出た。
唇がうなじに押し当てられる。ちゅ、と軽い音を立てて口付けを落とし、彼の唇は耳朶へと移動してきた。
「それは、クリスマスじゃないといけない?」
「は?」
「クリスマスまであと数日だろう。明後日夕方から時間が取れるから一緒にプレゼントを買いに行って。それから、イルミネーションも見てこよう」
「え……」
「で、そうだな……イヴの日は午後からの仕事だから、23日にシャンパンとケーキ。チキンも。もし何なら、個室予約して外に出てもいいし」
「アスラン……」
やっぱり、甘やかされている。
彼はキラの言ったことを叶えようとしてくれている。目一杯のスケジュールで、あいた時間には身体を休めなければ辛いのに、その時間を使ってキラの願いを叶えようと。
「うん……。ありがとう」
顔が見たいなと思ったけれど、間近にありすぎる彼の顔は振り返っても見えなかった。
その代わり耳朶にあたたかい唇が再度押し当てられて、耳元に再び言葉が吹き込まれる。
「それに。最後のあれは、キラが嫌じゃなければ俺はいつだってしてあげるよ」
「……ッ」
低い囁きに、キラの肌が一気に粟立った。
ふと気付けば、アスランは背後からキラの身体を押さえ込んでいる。彼の片手はさりげなくキラの服の裾近辺をうろうろしているし。
そういう意味じゃないのに!
キラはそう叫びそうになったが、でもそういう気分じゃない……わけじゃなかったので、口には出さない。
本当に、単純だと思うけれど。アスランの今の言葉で、キラの気持ちは簡単に治まってしまった。
「…………じゃあ、今日して」
軽い愛撫を続けている彼にそう告げて、少しだけ身体をひねる。
「いいよ。これからクリスマスまで、毎日でも」
やっと目が合ったアスランがそんな提案をしてきて、キラは微笑った。
じゃあ毎日、なんて冗談めかして告げて、顔を近付け瞳を伏せる。
触れ合った唇が、何だか熱かった。
クリスマスって何だか浮かれるよね。
そう呟いたキラを、彼はとても不思議そうに眺めてきた。
「何で」
「何でって……イルミネーションとか、パーティとか、チキンとか、ケーキとか、プレゼントとか」
ベッドにごろごろしつつそう答える。アスランはすべてを頭に思い描いているのかしばし上方を見て黙り、それから小さく笑う。
「パーティがしたかった?」
「そうじゃないけど……」
クリスマスイヴもクリスマス当日も仕事だと言われたのはつい先ほどのことだ。
この時期になると特番も多いし年末に向けてタレントたちは忙しくなる。
当然クリスマスも暮れも正月もないに等しいわけで。それが毎年のことだとわかっているのに、今年はさすがにキラも拗ねたくなっていた。
去年までは、仕事が入っていると言ったって昼間だけだった。夜は何もなくて、マネージャーからのプレゼントケーキを手に家に帰ったものだ。
それなのに。
「今年……アスランと、……初めてのクリスマスなのに」
枕に口許を埋め、ぼそぼそと答える。
クリスマス自体は初めてじゃない。でも、アスランと、そういう関係になってからの、初めてのクリスマスなのだ。
どこかに行きたいとか、盛大なパーティをしたいとか、そんなのじゃない。
ただ一緒にケーキを食べて、いつもは飲まないシャンパンでも飲んで、少しだけでいいからクリスマス気分を味わいたかった。
「キーラ」
デスクで端末を弄っていたアスランが、苦笑交じりで立ち上がった。
キラが懐いているベッドに腰かけ、まだ少し湿っているキラの髪を撫でてくる。
「仕方ないとか、言わないでよね」
アスランが言いそうな台詞だったから、キラは先回りしてそう牽制した。
仕事なんだから仕方ない。当たり前のことだけれど、そんな風に片付けて欲しくなかった。
「言わないよ」
そう呟くアスランの顔はキラからは見えない。
「確かに、深夜の生放送はキツイよな」
「……別に仕事が嫌なんじゃないよ」
うん、わかってる、とアスランは頷いてくれた。その声があまりにも優しくて、ああ甘やかされてるなとキラは目を閉じた。
どうしてこう、自分はいつも些細なことで拗ねてしまうのだろう。情けないと毎回反省するのに、いつも同じことを繰り返す。キラが拗ねてアスランが宥めて、妥協案を提案してくれて。
「ひとつ、訊いていい? キラ」
「……なに?」
髪を梳く指先が、さわりと耳元を撫で上げて行く。
「仕事が嫌じゃないのはわかった。じゃあ、何が嫌なんだ?」
「…………」
嫌というわけじゃない。
どう答えたものかとキラがそのまま沈黙していると、アスランが問いを変えてきた。
「うーん、じゃあ、キラは、クリスマスに何がしたかった?」
何が。
キラは閉じていた目を開き、数度瞬きをした。
ゆっくりと、唇を動かす。
「一緒に、ケーキ食べて、シャンパン飲んで」
「ああ」
「できたら、チキンも食べたいし」
「それから?」
「……せっかくだから、イルミネーションを見たりとか」
「いいな。あとは?」
「あとは、……」
アスランに、プレゼントだって買ってあげたい。
くっついて、じゃれ合って、幸せな気持ちのまま寝てしまえたらいい。
最後の言葉は本当に小さな声だったが、アスランはちゃんと聞き取ってくれたようだった。
「キラ」
うつ伏せのまま枕を抱え、顔をあげようとしないキラの上に彼が被さるように乗ってくる。反射的にぐえ、と色気のない声が出た。
唇がうなじに押し当てられる。ちゅ、と軽い音を立てて口付けを落とし、彼の唇は耳朶へと移動してきた。
「それは、クリスマスじゃないといけない?」
「は?」
「クリスマスまであと数日だろう。明後日夕方から時間が取れるから一緒にプレゼントを買いに行って。それから、イルミネーションも見てこよう」
「え……」
「で、そうだな……イヴの日は午後からの仕事だから、23日にシャンパンとケーキ。チキンも。もし何なら、個室予約して外に出てもいいし」
「アスラン……」
やっぱり、甘やかされている。
彼はキラの言ったことを叶えようとしてくれている。目一杯のスケジュールで、あいた時間には身体を休めなければ辛いのに、その時間を使ってキラの願いを叶えようと。
「うん……。ありがとう」
顔が見たいなと思ったけれど、間近にありすぎる彼の顔は振り返っても見えなかった。
その代わり耳朶にあたたかい唇が再度押し当てられて、耳元に再び言葉が吹き込まれる。
「それに。最後のあれは、キラが嫌じゃなければ俺はいつだってしてあげるよ」
「……ッ」
低い囁きに、キラの肌が一気に粟立った。
ふと気付けば、アスランは背後からキラの身体を押さえ込んでいる。彼の片手はさりげなくキラの服の裾近辺をうろうろしているし。
そういう意味じゃないのに!
キラはそう叫びそうになったが、でもそういう気分じゃない……わけじゃなかったので、口には出さない。
本当に、単純だと思うけれど。アスランの今の言葉で、キラの気持ちは簡単に治まってしまった。
「…………じゃあ、今日して」
軽い愛撫を続けている彼にそう告げて、少しだけ身体をひねる。
「いいよ。これからクリスマスまで、毎日でも」
やっと目が合ったアスランがそんな提案をしてきて、キラは微笑った。
じゃあ毎日、なんて冗談めかして告げて、顔を近付け瞳を伏せる。
触れ合った唇が、何だか熱かった。
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