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咲良の徒然気まま日記。 ゲームやらアニメやら漫画やらの感想考察などをつらつらと。 しばらくは、更新のお知らせなどもここで。

2024'05.19.Sun
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2009'06.19.Fri
前々から言っていますが、この設定は楽しいのでぜひ長編で書きたいです。


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 砂塵が舞っている。機械の駆動、爆撃、……戦場に響くのはすべて破壊を齎す旋律。
『……リンクロッド隊陣営を崩さず前進、敵部隊に向けて一斉掃射! 敵を後退させるな、包囲しろ! マーカス隊P1からP5、三時の方向から崖上へ進攻、包囲網を突破せよ! 奥の指揮官を炙り出せ!』
『イエス、マイロード!』
 通信から聞こえる兵士たちの声は興奮に沸き立っている。
 ランドスピナーが唸りをあげる。ザザザ、と激しい音を立てながら機体を止め、モニターを見た。
敵機のマーカー、味方の位置、動き……。
(そうか)
 彼の意図は読めた。部下たちに手柄をくれてやるつもりなのだろう。
 そしておそらく。
(最後の仕上げは、)
 ぐ、っとレバーを握り、エナジーウイングを解放する。土煙を上げ飛翔すれば、通信回線の先で彼が笑う気配がした。
『敵本陣の守りが薄れた、―――スザク!』



 EUとの戦いが本格化してきてから、ナイト・オブ・ラウンズが派遣される回数が格段に増え、場合によっては一人ではなく二人同じ戦地に赴くこともあった。ただ戦力としての派遣ではなく、戦場の指揮・統制を目的とした派遣――そこには、必ず『彼』の姿がある。
「……相変わらず容赦ないなあ」
 報告書と共に提出する録画映像を見ながら、ジノがぽつりと呟いた。
「僕が?」
 意味はわかっていながらそう訊ねると、彼は首を竦める。
「いや、戦略が。ま、スザクも相当えげつないとは思うけどさ」
「そうかな。あれでも手加減してるよ」
「手加減してる奴が戦艦の上でヴァリスぶっ放すかっての」
「……うーん、あれは、仕方なく?」
「可愛く首傾げても駄目」
 もうおまえのそれには騙されない! とジノはスザクに手に持っていたドリンクパックを押し付けてくる。受け取ってストローを口に咥え、スザクは画面に視線を戻した。
 黒い機体が虹色の光を纏って空を駆け、戦場の動きを変えていく。通信記録はこれとはまた別のところで管理しているので、どんな指示が出されていたのかこの映像だけではわからない。が、味方の動きを見ていればこちらの指揮官の有能ぶりは窺えるというものだ。
「でも、あそこにいたのがジノでも、同じことをしたと思うけど」
「確かに。あのままだと、味方もろとも敵艦主砲の餌食だ。……いつかのアプソン将軍じゃないけど、窮地に陥った時の行動ってのは怖い結果を生むしな」
 ジノの言葉に、そういえば焦って主砲を味方艦に撃ってしまった将軍がいたなと思い出す。皇族を乗せていた艦だというのにエンジンを撃ってしまって、一時大騒ぎになったのだ。あのときは同行していたラウンズも大騒ぎだった。アヴァロンに乗っていたのが帝国第四皇女だったものだから尚更。
「で、スザク」
「うん?」
 ずず、と音のしたドリンクパックをジノの手に戻すと、彼は何とも言えない渋い顔をした。それをきれいに無視してリモコンをテーブルから持ち上げ、ピ、とディスクを停止させる。
「最近スザクが冷たい気がするんですけどー」
「気のせいじゃないの」
 さらりと答えてディスクをケースにしまう。今回の戦闘には参加しなかったジノが見たいと言ったので、提出前に休憩室に持ってきたのだ。彼が見たかったのは単純な戦闘データなのか、それとも戦略・戦術の詳細か。いや、きっと、こちらの指揮をしていた人物のことが知りたいだけなのだろうと思うが。
「スーザークーゥ」
「うわっ、重い! ジノ!」
 ケースをテーブルに置いたところでジノが後ろから抱きついてきて、スザクはぐぐっと呻いた。背後から甘えるように首に手を回して抱きついて――と、言葉にしたらかわいらしいものだが、自分より一回りほど大きい身体でそれをやられてはたまったものじゃない。
「うぐ……、ジノ、君、これ昨日ルルーシュにもやってただろう……」
 恨みをこめた声で咎めると、ジノはにやっと口元だけ笑みの形に吊り上げた。
「ふーん、やっぱりスザクの不機嫌はそれか」
「不機嫌なんかじゃないけど」
「無自覚かよ、タチ悪ー」
「違う。ジノの捉え方が間違ってるだけだって」
「捉え方? 不機嫌じゃなくて怒ってる、とか?」
「だからどうしてそういう……。怒る理由がない」
 ため息をつきながらそう言うと、ジノがふーんと軽い答えを返してきた。納得したなら手をどかせ、と思ったが、彼はやめる気などないらしい。先程よりは体重をかけずにいるようだが重いものは重い。彼なりの友好表現だとわかっているので振り払うようなこともできない……のは、どんなに図体が大きかろうと彼が自分よりも年下なのだと思っているからだろうか。
「皆の好奇心が嫌なだけなんだ。別にジノに、ってわけじゃない」
 今度は少し長めのため息をつく。肩あたりにあったジノの顔が少し前に出てきてスザクの顔を覗き込もうとする。
「やっぱりルルーシュ絡みじゃないか」
「そうだよ。悪いか」
「うわ、開き直った! でもなあ、皆がルルーシュに構いたくなるのは仕方ないと思うけどね」
「秘密がありすぎる、って?」
「ああ。それにルルーシュ美人だしな」
「……。君が言うとシャレにならないからやめたほうがいよジノ……」
 あれだけの指揮能力を持ちながら軍隊に属していたという記録もない、かと思えばナイトメアの騎乗経験はある。一体どこで、どんな経歴で、と皆が気にするのはわかるのだ。
 現在のナイト・オブ・ラウンズの中でも異彩を放つ彼は、公開されている情報がとても少ない。ルルーシュ・ランペルージ。18歳。誕生日は12月5日。プロフィールもそれだけの簡素なもので、帝国側も本人もそれ以上を語ろうとしないため、必然的に詮索はすべてスザクに来る。
 枢木スザクはルルーシュ・ランペルージの『特別』である――彼がラウンズになって早々、そんな噂が流れたからだ。
「それに、戦場でのあの大胆不敵な指揮ぶりと、普段のギャップがなんとも言えない」
「それは僕も思う」
「猫に追いかけて植え込みに飛び込んじゃうとかさー、女の子に囲まれてもみくちゃにされてみたりさー、天下のナイト・オブ・ラウンズなのに運動神経からっきしとかさ」
「反射神経はいいんだよ。動体視力もまあまあだと思う」
「でも体力ないだろ。彼の後継人になってるアッシュフォードのお嬢さんにも走って負けたとかって」
「あー……、うん、ミレイさんには負けてたかも……」
「には、っていうか、にも、だろ。だからさ、アーニャとかモニカとかノネットとかにしたら、そういうところが可愛くて仕方ないんだって。つーかスザクもそうだろ? 危なっかしくて放っておけない」
「…………」
 さすがに、即座に返答はできなかった。しばし考え、スザクは首を横に振る。
「僕がルルーシュといるのは、彼が心配だからじゃない。僕がただ単に彼のそばにいたいだけだよ」
「それ! それもいいカモなんだぜスザク。ルルーシュとスザクの『特別』の定義はなにかな~? っていうさ」
「それこそ皆には関係ないじゃないか、」
「ルルーシュを好きな奴には関係大有りだろー?」
 その言葉にスザクはぴくりと反応し、横目でちらりとジノを見た。
 ルルーシュを好きになる人。それは彼のどこを見て、だというのだろう。彼の本質をどこまで理解ししているというのだろう。
 だが実際、ルルーシュはモテる。ナイト・オブ・ラウンズという地位柄、ジノやスザクも夜会などでは相当ちやほやされるが、ルルーシュはその比ではない。それこそ、男も女も関係なしに。
(…………)
 思い出したらまたむかむかしてきて、スザクは声音を落としてジノを呼んだ。その変化を彼も感じ取ったのだろう。ずしりと乗っていた顔が少しだけ浮いた。
「とにかく。いい加減に放してくれないかな」
「スザク抱き心地いいからなー」
「関係ないだろ。ルルーシュにも同じこと言ってたくせに、……あ」
 うっかり口をついて出た言葉にはっと唇を閉ざす。が、言ってしまったものはもう元には戻らない。
 さっきまでジノに言っていた言葉はもちろん嘘じゃないが、全部が全部本当でもない。ジノがルルーシュに抱きついているのを見て、もやっとしたのは事実なのだ。
 彼が、自分のことを『特別』と言ってくれるだけでいい。そう思ってみても、やはり彼に接触する人物のことは気になるわけで。
「あー……、なんだ、スザクッ、嫉妬したんだな!」
「は!? ちょっと待っ、ジノ、……ぐえっ」
 何かを誤解したジノが腕の力を強めぎゅうううう、と抱きしめてきた。いや、ぎゅうっという擬音はかわいいが、やられたスザクとしてはぐええええ、という感じである。苦しい。非常に苦しい。
 ギブアップだというように腕をぽんぽん叩いて、やっとのことで腕を緩めさせる。ジノはけたけたと笑っているだけでまったく反省していない。悪気のないこの笑みを見ていると何だか怒る気も失せてしまうのだが……こうして毎回好きなようにやらせておくから彼のスキンシップが過剰になるような気もする。
 しかし結局、ジノの笑みにふっと表情を和らげると、彼は少し笑顔の質を変えた。
「機嫌直ったみたいじゃないか」
「だから機嫌悪くなんかないって」
「素直じゃないなー。ま、そんなスザクも好きだけど」
「……ジノ」
 そう軽々しく好きだとか言わないで欲しい。眉を僅かにくもらせ彼の名を呼んだところで、スザクははっと部屋の入り口に視線をやった。
 ジノと騒いでいて気付かなかったが、入り口の扉枠に身体を預けて、こちらをじっと見つめている人物がいる。
「る、」
「…………ふーん?」
 さっきまで話題に上っていたルルーシュ本人が、手に持っている書類で口元を隠し、目を細めてスザクとジノを交互に見た。
 気配にまったく気付かなかった。扉が開く音にすら気付かなかった。どこから聞いていたのだろう。
「ルルーシュ。報告書、書けたのか?」
「ああ。……ジノ、昨日は悪かったな。シミュレーションにつき合わせて」
「いや別に。報告映像見たよ。今日の戦略も見事でしたランペルージ卿」
 とか何とかジノとルルーシュが会話を交わしている間、スザクは動けずにいた。何故って、ルルーシュの瞳がまったく笑っていなかったからである。
 今までジノとしていた会話を巻き戻して思い出す……が、しかし、ルルーシュに聞かれてまずいことはおそらくなかった。なかった、はずだ。
「ルルーシュ、」
「スザク。お前の報告書は?」
「あぁ、こっちは、映像ディスクとこの陳述書……」
「寄越せ、俺が行ってくる」
「いや、僕も行くよ。じゃないとベアトリスに怒られる」
「……ふうん」
 ルルーシュはまだ感情の窺えない瞳でこちらを見るだけだ。が、ジノがぷっと吹き出したのを合図にするように、ルルーシュが手を下ろす。書類で隠されていた口元は――笑っていた。
「……あれ?」
 ぽかん、と彼を見る。白いタイトなラウンズの制服をきっちり着こなしている彼が、笑いながらスザクのほうに歩いてくる。
「何呆けてるんだよ。その書類、本当に大丈夫なのか?」
「あ、うん、たぶん……」
「たぶん? 心許無い返事だな。行く前に俺が見てやろうか。さっきイルバル宮に寄って来たが、皇帝首席秘書官殿はご機嫌斜めみたいだったぞ」
「えっ」
「ん、何、何かあったのか?」
 ジノがスザクをやっと解放する。まだ抱きついていたのか、と呆れ顔で彼を見やれば、うん? と不思議そうに見返された。ジノにとってあの程度のスキンシップは本当に『普通』らしい。とはいえ、スザク以外ではルルーシュくらいしかやられている人間を見たことがないのだが。
「特に何も」
 そう即答したあと、ルルーシュはふと思い出したように口許に手を当てた。
「……いや、もしかしたら、エクセター要塞のことかもしれないな。不可解な動きがあると報告があるんだ」
「エクセターって、今日行ったところからそう離れてないじゃないか」
「難攻不落のエクセター要塞、か。ふうん。楽しそうだな」
 ジノがにやりと笑う。ルルーシュが顔を上げ、こちらもジノに負けず劣らずいい笑みを浮かべる。
「なら、エクセター要塞陥落の作戦にはヴァインベルグ卿を指名させてもらおうか」
「イエス、マイロード! 約束だ、ルルーシュ」
「わかったから、マイロードはやめてくれジノ。確かに俺は指揮官だけど、上司ではないんだから……」
「ルルーシュ」
 そのまま話が終わってしまいそうな雰囲気に、スザクは硬い表情でルルーシュを呼んだ。静かにスザクを見て、ルルーシュが微笑む。
「もちろんお前も強制参加だ。俺の戦略にナイト・オブ・セブンとランスロットは必要不可欠だからな」
「……君の指揮なら、僕はいつでも」
 スザクがそう答えると、彼は一層優しく微笑んだ。自分だけに向けられるその微笑に、スザクの胸はいつだって熱くなる。
(ルルーシュを、守りたい)
 ――白状しよう。スザクは、本当に、彼のことが好きなのだ。すべてを賭けて、すべてを捨ててでも、彼のそばにいたいと思うほどに。
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