2007'09.25.Tue
シールルですー。ちまちま書き進めていたのがやっとできました。前に考えていた話となんとなく違ってしまったのはご愛嬌。一気に書かないと何を書きたかったのか忘れてしまうんです…;
あ、通販発送は諸事情で明日になりそうです。お待たせしている方、申し訳ありません(>_<;)
と、とりあえず、スザルル前提シールル、以下からどうぞ!
あ、通販発送は諸事情で明日になりそうです。お待たせしている方、申し訳ありません(>_<;)
と、とりあえず、スザルル前提シールル、以下からどうぞ!
*-*-*-*-*-*
「愛とは?」
「与えるもの」
迷いなく答えたルルーシュに、C.C.は少しだけ目を細めた。
特に何を思って問うた訳でもなかったが、さらりと、当たり前のことのように言われた言葉にひっかかりを覚える。
「なら、対象は?」
「値する者」
「基準は?」
「俺がそう思うか否か」
「具体的には誰だ?」
「…………おい、さっきから何なんだ」
適当に――とは言っても結構本心だろう――答えていたルルーシュも、さすがに嫌そうな表情でC.C.を振り返る。
ルルーシュの正面には光る端末があり、その画面には白兜のデータがこれでもかと打ち込まれている。
何度も辛酸を嘗めさせられたからか、ここ数日、ルルーシュはそれにかかりきりだった。何度か対峙したお陰でデータが揃ってきたんだ、とにやっと悪人の笑みを浮かべた彼は、とても嬉しそうだった。
やっと、邪魔者を排除できるかもしれないのだ、喜ぶのも当たり前だろうが。
「具体的には?」
振り返ったきり何も言わないルルーシュに、C.C.はもう一度問いかけた。ごろりとうつ伏せに寝転がると、胸に抱えた黄色い人形が重みで妙な形に潰れた。
「……ナナリーに決まってる」
「ああ、そうだな。それから?」
ルルーシュは嘘が下手だ。
ああ、いや、下手なのではなく、嘘をつくことが嫌いなのだ。そう思う。
だから、嘘をつかずに済む話運びを無意識に選び、嘘をつかずとも今までどおりの生活ができるように誘導する。
だが今のように嘘をつかなくてはならない局面になると、一瞬だが隙が出来る。
それをC.C.は愚かだなと思う。嘘など、いくらでもつけばいい。自分を守るため、目的のため、未来のため、好きなだけつけばいいのに。
「お前に教える義理などない」
結局、ルルーシュはそんな言葉を投げて、再び打倒白兜へと意識を切り替えてしまった。
その後姿にくすりと笑い、C.C.は少しだけ身体を後ろへと転がすと横向きになった。
華奢な身体、頼りない背、細い腕。……そして、脆い心。
その辺の一般人に比べれば、度胸も才能も桁違いだろうが……それでも、幼い頃の体験のせいか、この少年の心は脆い。『死』に怯え、『生』にしがみつき、『妹』を守るため己を殺そうとして――失敗する。
「……枢木スザクは、愛を与えるべき対象か?」
ぴくりと肩が揺れたが、答えは返らなかった。
だがC.C.は知っている。誰よりも何よりも彼がスザクに与えている、一方的な愛情を。
愛は与え、そして与えられるもの。それが道理。
だがルルーシュはそれを拒む。愛を与えられることを恐れる。
それは何故か。与えられていたものが急に失われる、その底知れぬ絶望を知っているからだ。
ルルーシュの失った愛情――惜しみ無く与えられた母の愛、僅かでもあると信じていた父の愛、競うよう育てられた皇子皇女同士むけあう幼い親愛……そしておそらく、初めて得た枢木スザクの友愛。
奪われたもの、幻だったもの、見失ってしまったもの、変化してしまったもの。その失い方は様々だが、どれも彼には過酷な現実だ。
いつか失ってしまうなら最初からなくていい。そう頑なに膜を張る姿は、C.C.にしてみれば滑稽でしかない。
薄く脆い膜だ。包み込む愛情ではなく、叩き付ける愛情の前では盾にもならぬ。
枢木スザクがルルーシュに向ける変化した愛は後者に近い。あいつの戯れだと、今だけだと、そう自嘲しながらルルーシュはその愛を甘受する。跳ね返すほど強くない膜を知っているからか、一度は受け、そして流す。内に取り入れてしまっては自らが立てなくなるから。
そして枢木スザクのそれを受け流しておきながら、自分は求められるままに与えてしまうのだ。無償の愛、といえば聞こえはいいだろうが。
「与えて与えて……そのうち干からびるな、お前は」
受け入れなければ、そのうち一方的なそれは枯渇する。覆し難い疲労と共に、限界が訪れる。
「干からびた男はみすぼらしいぞ、ルルーシュ」
嘘をつくのが嫌いなくせに、人の嘘を見抜けないその浅はかさが愛しい。
どの愛が本当で、どの愛が嘘だというのだ。失った愛はお前の中で消えてしまったのか。見えなくなった、感じなくなった愛情はお前の中でどう処理されている?
C.C.とてすべてを知っているわけではない。だが皇族の事情と言うものは熟知していた。マリアンヌとルルーシュに関わることを決めたときから。
競い合うことを運命付けられた皇族。だが継承権など関係なく、異母であることも関係なく、皇子皇女は宮で交流を交わす。そこに必ずしも敵対心があるわけではない。すべてがあの男のように争うことを望む残忍な思考を持つわけではないのだ。
C.C.はそれを知っている。そして、おそらくは、ルルーシュにとっては過酷は事実をも。
ルルーシュが手にかけたあの皇子が、マリアンヌを敬愛し、エリア11となったこの地でルルーシュとナナリーを失ったことを嘆き悲しんでいたこと。
C.C.が接触する前の出来事だ。今更蒸し返しルルーシュを動揺させるつもりはない。
彼には契約に則り王の器を示してもらわねば困る。
前に言ったように、ルルーシュにはもう立ち止まる権利はない。過去を振り返るなとまでは言わないが、振り返り後悔することは許されぬ。己の行動の責任は己で取るしかない。
……そう、生きるために必要なのだ。
「――干からびたとしても」
不意に、ルルーシュが口を開いた。
だが視線は未だ明滅するモニターに向けられたまま。
「俺には何の影響もない」
いっそ清々しいほどの答えに、C.C.は笑った。
「確かにな。影響があるのはあの男だ」
それでもいいと言うのだな、お前は。
カタカタと規則正しいタイピングの音。きっとルルーシュの頭の中ではいくつもの事柄が巡り巡っているだろう。
C.C.の言葉と、目の前の作戦、黒の騎士団、最愛の妹、……そして愛を与えられなくなった枢木スザクの末路まで。
「ああ、でも、ルルーシュ」
与えられる愛は確かにそこにあるのに、目に見えないだけで意味を成さなくなる。
今この瞬間にも、ルルーシュのことを考え、想い、愛を与えてくれている者はいるだろうに。
「私はお前を愛してるぞ」
カタカ……。
音が止まる。ギギギ、と錆びた機械のように振り向いたルルーシュは、複雑そうな顔をしていた。
「信用しろ。受け取れ。お前が干からびないようにな」
「………………寝言は寝て言え」
その愛に気付かないならば、少しだけ受信塔の役目をしてやろうではないか。
おまえの気付かない愛を、受けて流し込むために。
「愛とは?」
「与えるもの」
迷いなく答えたルルーシュに、C.C.は少しだけ目を細めた。
特に何を思って問うた訳でもなかったが、さらりと、当たり前のことのように言われた言葉にひっかかりを覚える。
「なら、対象は?」
「値する者」
「基準は?」
「俺がそう思うか否か」
「具体的には誰だ?」
「…………おい、さっきから何なんだ」
適当に――とは言っても結構本心だろう――答えていたルルーシュも、さすがに嫌そうな表情でC.C.を振り返る。
ルルーシュの正面には光る端末があり、その画面には白兜のデータがこれでもかと打ち込まれている。
何度も辛酸を嘗めさせられたからか、ここ数日、ルルーシュはそれにかかりきりだった。何度か対峙したお陰でデータが揃ってきたんだ、とにやっと悪人の笑みを浮かべた彼は、とても嬉しそうだった。
やっと、邪魔者を排除できるかもしれないのだ、喜ぶのも当たり前だろうが。
「具体的には?」
振り返ったきり何も言わないルルーシュに、C.C.はもう一度問いかけた。ごろりとうつ伏せに寝転がると、胸に抱えた黄色い人形が重みで妙な形に潰れた。
「……ナナリーに決まってる」
「ああ、そうだな。それから?」
ルルーシュは嘘が下手だ。
ああ、いや、下手なのではなく、嘘をつくことが嫌いなのだ。そう思う。
だから、嘘をつかずに済む話運びを無意識に選び、嘘をつかずとも今までどおりの生活ができるように誘導する。
だが今のように嘘をつかなくてはならない局面になると、一瞬だが隙が出来る。
それをC.C.は愚かだなと思う。嘘など、いくらでもつけばいい。自分を守るため、目的のため、未来のため、好きなだけつけばいいのに。
「お前に教える義理などない」
結局、ルルーシュはそんな言葉を投げて、再び打倒白兜へと意識を切り替えてしまった。
その後姿にくすりと笑い、C.C.は少しだけ身体を後ろへと転がすと横向きになった。
華奢な身体、頼りない背、細い腕。……そして、脆い心。
その辺の一般人に比べれば、度胸も才能も桁違いだろうが……それでも、幼い頃の体験のせいか、この少年の心は脆い。『死』に怯え、『生』にしがみつき、『妹』を守るため己を殺そうとして――失敗する。
「……枢木スザクは、愛を与えるべき対象か?」
ぴくりと肩が揺れたが、答えは返らなかった。
だがC.C.は知っている。誰よりも何よりも彼がスザクに与えている、一方的な愛情を。
愛は与え、そして与えられるもの。それが道理。
だがルルーシュはそれを拒む。愛を与えられることを恐れる。
それは何故か。与えられていたものが急に失われる、その底知れぬ絶望を知っているからだ。
ルルーシュの失った愛情――惜しみ無く与えられた母の愛、僅かでもあると信じていた父の愛、競うよう育てられた皇子皇女同士むけあう幼い親愛……そしておそらく、初めて得た枢木スザクの友愛。
奪われたもの、幻だったもの、見失ってしまったもの、変化してしまったもの。その失い方は様々だが、どれも彼には過酷な現実だ。
いつか失ってしまうなら最初からなくていい。そう頑なに膜を張る姿は、C.C.にしてみれば滑稽でしかない。
薄く脆い膜だ。包み込む愛情ではなく、叩き付ける愛情の前では盾にもならぬ。
枢木スザクがルルーシュに向ける変化した愛は後者に近い。あいつの戯れだと、今だけだと、そう自嘲しながらルルーシュはその愛を甘受する。跳ね返すほど強くない膜を知っているからか、一度は受け、そして流す。内に取り入れてしまっては自らが立てなくなるから。
そして枢木スザクのそれを受け流しておきながら、自分は求められるままに与えてしまうのだ。無償の愛、といえば聞こえはいいだろうが。
「与えて与えて……そのうち干からびるな、お前は」
受け入れなければ、そのうち一方的なそれは枯渇する。覆し難い疲労と共に、限界が訪れる。
「干からびた男はみすぼらしいぞ、ルルーシュ」
嘘をつくのが嫌いなくせに、人の嘘を見抜けないその浅はかさが愛しい。
どの愛が本当で、どの愛が嘘だというのだ。失った愛はお前の中で消えてしまったのか。見えなくなった、感じなくなった愛情はお前の中でどう処理されている?
C.C.とてすべてを知っているわけではない。だが皇族の事情と言うものは熟知していた。マリアンヌとルルーシュに関わることを決めたときから。
競い合うことを運命付けられた皇族。だが継承権など関係なく、異母であることも関係なく、皇子皇女は宮で交流を交わす。そこに必ずしも敵対心があるわけではない。すべてがあの男のように争うことを望む残忍な思考を持つわけではないのだ。
C.C.はそれを知っている。そして、おそらくは、ルルーシュにとっては過酷は事実をも。
ルルーシュが手にかけたあの皇子が、マリアンヌを敬愛し、エリア11となったこの地でルルーシュとナナリーを失ったことを嘆き悲しんでいたこと。
C.C.が接触する前の出来事だ。今更蒸し返しルルーシュを動揺させるつもりはない。
彼には契約に則り王の器を示してもらわねば困る。
前に言ったように、ルルーシュにはもう立ち止まる権利はない。過去を振り返るなとまでは言わないが、振り返り後悔することは許されぬ。己の行動の責任は己で取るしかない。
……そう、生きるために必要なのだ。
「――干からびたとしても」
不意に、ルルーシュが口を開いた。
だが視線は未だ明滅するモニターに向けられたまま。
「俺には何の影響もない」
いっそ清々しいほどの答えに、C.C.は笑った。
「確かにな。影響があるのはあの男だ」
それでもいいと言うのだな、お前は。
カタカタと規則正しいタイピングの音。きっとルルーシュの頭の中ではいくつもの事柄が巡り巡っているだろう。
C.C.の言葉と、目の前の作戦、黒の騎士団、最愛の妹、……そして愛を与えられなくなった枢木スザクの末路まで。
「ああ、でも、ルルーシュ」
与えられる愛は確かにそこにあるのに、目に見えないだけで意味を成さなくなる。
今この瞬間にも、ルルーシュのことを考え、想い、愛を与えてくれている者はいるだろうに。
「私はお前を愛してるぞ」
カタカ……。
音が止まる。ギギギ、と錆びた機械のように振り向いたルルーシュは、複雑そうな顔をしていた。
「信用しろ。受け取れ。お前が干からびないようにな」
「………………寝言は寝て言え」
その愛に気付かないならば、少しだけ受信塔の役目をしてやろうではないか。
おまえの気付かない愛を、受けて流し込むために。
PR
Post your Comment
NEW
(04/09)
(11/15)
(11/11)
(11/04)
(10/28)
(10/21)
(10/20)
twitter
適当なことばかり呟いています。@歓迎。
@sakura_pm からのツイート
@sakura_pm からのツイート
SEARCH
CATEGORIES
RECOMMEND
LINK