――出会いは桜吹雪の中だった。
(とかなんとか……)
そう言ってしまうとかっこよくドラマのような出会いだが、シンにとってはあまり思い出したくない出来事だった。
この全寮制の高校を選んだのは親元を離れたかったからだし、自分の過去を知っている人間から離れたかったからだ。それなのにどうして、やっとこの生活にも慣れて、友達もできた頃になってアイツと再会しなければならないのだ。
「……ン」
だいたい、何故アイツがこんな辺境の学校に来たりするんだ?
「シン」
隣からヴィーノがシンのわき腹を突っついてくる。さっきから何だって言うんだ、そこは俺だって突っつかれたらくすぐった――
パシンッ。
「いてっ」
シンの脳天に軽い痛みがはしる。何だと睨み付ける様に見上げれば、そこにはにっこり笑顔をまとったセンセイがいた。
「シン・アスカ? 僕の授業はそんなにつまらないかな?」
「え、」
一瞬言葉に詰まる。
「堂々と寝てくれるよりはマシかな? 何を考えてたのか知らないけど……」
そうだ、アイツだけじゃない、アンタも俺の日常を壊してくれたんだ。どうしてくれるんだ。
「……ってシン? こら、また聞いてないだろう」
ポカッ。
丸められた教科書がシンの頭に落とされた。加減してくれているのだろう、あまり痛くない。
「えーと……すみません」
「素直でよろしい。さ、もう時間も残り少ないからさくさくいくよ」
シンににっこり微笑むと、センセイはくるっと踵を返し壇上へと戻っていく。
「シン、よかったなー。あのセンセ、怒るとすっげ怖いらしいよ?」
「……知ってる」
なんたって自分はその場面を目撃したのだ。
口論から、殴り合い――そして。
(……ッ)
脳裏によみがえった映像と音声にシンはかぁっと頬を染めた。
「なんだシン、思い出し笑い? やらしいなー」
ヴィーノのからかいにも反応できない。うるさい、と先程のお返しに脇腹をくすぐってやる。
あの日、あの時、あの場所で、彼らを見なければ。
きっとシンの生活は安泰だったのに。
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