2008'05.09.Fri
と、いうわけで続きです。明日までに終わるのかこれ…!無理だろ!
とか頭を抱えていますがとりあえず。
間に合わなくて、居た堪れなくなったら…ナナリーの電話シーンだけは削除するかもしれません…。もしくは本編に副ったかたちで書き直し?
今回はスザクのターン。そしてスザvsロロ。
僅かですがアレの描写があります。でもそのシーンの最中ではないので年齢制限はいらないですよ…ね?(そのへんの線引きがわからない)(汗)
ていうかスザクの新しい階級は准将であってるんだろうか。どっかでそう見たような気がしたんだけど…違うかもしれない;;違ったらすみません!妄想です!(←笑)つか、准将って相当の出世ですよね。ラウンズってことを抜きにしても。
★
あ、通販発送しました!5/8までに入金確認できた方が対象です。今回ははじめましてな方が多いような気がします。えへへ嬉しい。種のはじめましてな方とかちょう嬉しい。みんな無事に届きますように!
とか頭を抱えていますがとりあえず。
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今回はスザクのターン。そしてスザvsロロ。
僅かですがアレの描写があります。でもそのシーンの最中ではないので年齢制限はいらないですよ…ね?(そのへんの線引きがわからない)(汗)
ていうかスザクの新しい階級は准将であってるんだろうか。どっかでそう見たような気がしたんだけど…違うかもしれない;;違ったらすみません!妄想です!(←笑)つか、准将って相当の出世ですよね。ラウンズってことを抜きにしても。
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*-*-*-*-*
心の中にある感情はずっと漣立っていて、寄せては返す波のように一定の波形を保っていられなかった。ぶれて波打つ感情につく名をスザクは知らない。あのとき……神根島の遺跡で彼と対峙したときに感じたルルーシュへの怒りと憎しみは、この一年で燻るだけの残滓となってしまっている。
だからと言って、ルルーシュに――いや、ゼロに対する憤りは決して消えはしない。ずっと忘れていた矛盾する心。あのまま彼が目覚めなければ、……ゼロが再びこの世界に現れなければ、スザクはこの心を忘れていられた。
ゼロは排除するべき反逆者だ。皇族を殺し、日本人を唆して戦いを挑み、最悪の形でエリア11を矯正エリアへと落としたテロリスト。力に力で挑み、犠牲をものともせず、目的のためには手段を選ばなかった非道な――。
「……っ」
ガン! 握り締めた拳を寄り掛かっていた壁に打ち付ける。ブリーフィングルームには、今は誰もいない。ただ対象の様子が映し出されるモニターが暗い部屋に色とりどりの光を落としているだけ。
ゼロのことを思い出すときに出てくる言葉を、スザクは最近よく耳にする。目的のためには手段を選ばず、犠牲を厭わず、容赦のない攻撃で相手を沈黙させる、売国奴。ブリタニアの白き死神、ナイト・オブ・セブン。……スザク自身を表わす言葉。
お前はゼロと同じやり方をしているのだ――そう突きつけられているようだ。違う、とは言わない。ルルーシュがそうして己の目的を果たそうとしたように、スザクもまた目指す未来のためには手段を選ばないと決めた。ルルーシュを拘束し皇帝の前に突き出して、彼の身柄と未来を引き換えにこの地位を手に入れたときに。
ナイト・オブ・ワンになり領土をもらう。そのためなら何だってしてみせると思った。ゼロが否定した『きれいごと』で日本人の生活を取り戻してみせる。彼が目指した略奪、奪還の世界ではなく、ブリタニアに認められるやり方で手に入れてみせる。
そしてそれを、見せてやるのだ。ゼロを殺して。この世から消し去って。スザクの選んだ道を、示した世界を、彼に――ルルーシュに。
自分の歪んだ思想はきちんと理解している。ゼロとルルーシュは同じものだ。……わかっている。
けれど殺したいのは黒の騎士団のリーダーであるゼロ。ルルーシュではない。この世から消えるのは、……ゼロ、だけでいい。
だから、スザクの心は矛盾するのだ。ゼロに向ける感情は憤りと明確な殺意。だがルルーシュに向ける感情は、今は何の名もつかない。怒りも憎しみも悲しみも切なさも……何もない。
今の彼はC.C.を誘い出すための大事な餌であり、ゼロという大胆不敵なテロリストに一番近い人物。ただそれだけだ。スザクにとって、ルルーシュ・ランペルージは任務上監視しなければならない相手。どんな手を使ってでも、自分のもとに繋ぎとめておかなくてはならない相手。
そこにもまた矛盾が発生しているのだが、スザクは気付かないふりをした。気づいてしまっては、その矛盾に絡め取られ動けなくなってしまうから。
「……枢木准将?」
シュン、と小さな音がしたかと思うと、地下施設の扉が開いて小柄な人影が現れる。
「サボリですか」
中に入ってきたのは無表情のままのロロ・ランペルージだった。スザクは彼の本名を知らない。ロロという名前は生まれたときからの名なのか、それとも組織に身を委ねてからのものなのか。機情としても『ロロ』の正体は曖昧なままだった。いや、殺し屋というものは得てしてそういうものなのかもしれない。ロロという名もコードネームとして登録されている。現在の名――ランペルージはルルーシュやナナリーが偽名として使っていたものだ。彼はルルーシュの偽物の弟。血の繋がりはおろか、その内に情など存在しない。――普通ならば。
「君こそ。この時間はまだ授業中だ」
「自習になったんです」
さらりと答え返し、ロロはスザクの少し前で立ち止まると大きなモニターを見上げた。いくつかに分かれた監視カメラの映像。そのひとつに、ルルーシュのいる教室が映し出されている。居眠りもせず授業を受けているようだが、その視線はずっと窓の外へと向いていた。
「君はずいぶん、彼と仲良くなったんだな」
「え?」
スザクの問いにロロが怪訝そうに振り返った。微かな表情の変化だったが、ロロが感情を表に出すことは珍しい。ルルーシュと共にいてアッシュフォードの学生として過ごしているときはともかく、この機情の中でロロはあまり表情を変えることがなかった。
「ルルーシュはシスコンだけじゃなくてブラコンでもあったんだな」
「……。……嫉妬ですか」
スザクをじっと見つめ、ロロはそう言った。感情の見えない瞳はルルーシュと同じ紫色をしている。この少年が選ばれたのはギアス能力者だからという理由だけでなく、ナナリーと似たような髪の色と、この紫色の瞳があったからだった。
一年間、彼の愛情を一身に受けてきたのだろう。二人の様子を見ていればわかる。ルルーシュが弟に向ける視線や表情は、かつて彼がナナリーに向けていたもの。
嫉妬?
スザクは口許を歪めた。
……どちらが?
「まさか」
鼻で笑って返すと、ロロはしばらく探るようにこちらを見て……そしてふいっと視線を外した。
「確かに仲はいいですよ。そうあるべき、と……弟のあり方を僕に示したのはあなたでしょう」
「ああ。そうだったかな」
「少し、行き過ぎている気はしますが。……あの人は自分を犠牲にしてでも『弟』を……僕を助けようとした」
「自分を犠牲に?」
「オペレーション・バルハラ7号……バベルタワーで戦闘があった時ですよ。お前だけは助けてやる、そう言って笑って――僕を銃撃から庇って、爆風に煽られてタワー内部の吹き抜けに落ちた。……あのときは本当に死んだかと思った。任務が失敗すると思って、本気で心配しました」
結果的には、生きていたんですけど。
ロロは何でもないことのように、やはり無表情のままそう続ける。
「ふうん……本当に、『唯一の兄弟』みたいじゃないか」
スザクは嘲笑った。
ルルーシュが言った言葉を思い出したのだ。
俺にはもうロロしかいない――。
彼はそう言った。この世でたった一人の家族だから? 偽物だというのに?
他には誰もいない? その台詞に苛立った自分は一体何だろう。
「僕は今、ロロ・ランペルージでルルーシュ・ランペルージの弟です。あの人の弟として、お聞きしていいですか」
「なに?」
ロロがこちらを向く。視線が合った。
彼のギアスは回数制限もなく、有効範囲内にいさえすれば目を見ていなくても発動に巻き込まれる。目と目が合っても何の意味もない。だがギアスを持っている相手というのは、いつそれを発動させるかわからないため緊張感があった。この相手も例外ではない。
いくら機密情報局の者とはいえ、彼はその枠におさまりきらない部分がある。報告は聞いていた。表情ひとつ変えず、些細なことで仲間を殺害した残忍な少年。
その視線の仄暗さに、スザクは奇妙なデジャヴを感じた。
「昨夜、何があったんです?」
「……どうしてそんなことを?」
「あなたが兄さんの部屋に行ってから数時間、監視カメラが切られていた。あなたの指示でしょう。見せられないようなことでも?」
相変わらずロロの表情には何も映っていない。だがその声音には僅かな苛立ちが含まれているように感じた。隠し事をされたのが気に入らないのか、それとも……。
「昨日だけじゃない。あなたの歓迎会があった日から兄さんはおかしい。あなたを警戒しているようにも見える」
「記憶が戻っているのなら、警戒して当たり前だろう」
「あんなにあからさまな態度を? 用心深いゼロが?」
ロロの台詞に、スザクは反射的に視線を鋭くした。
「……任務にも支障をきたします。何をしようとしているんですか。兄に」
――兄、か。
スザクはそこで気付いた。この少年の瞳は、一年前の自分と似ているのだ。
彼を奪うものすべてに向けていた、獰猛な獣のようなそれ。
スザクはふっと首を竦めた。
「わかった。なら言おうか。監視を切ったのは、僕が傍にいたからだ」
「それだけ? ではないでしょう。今朝、兄さんの様子がおかしかった」
ああ。スザクは頷いて再び口を開く。
「抱いたよ。彼を。性的な意味で」
「っ!」
短い言葉で伝えると、ロロが息を呑む。
「記憶を奪う前は、それが当たり前だったから。別に何も不思議じゃない」
言葉が出ないのか、ロロは目を見開いたまま固まってしまっていた。驚き? そうじゃないだろう。震える唇はおそらく違う感情を噴出させようとしている。
「……そういうわけだ。記録に残すのはさすがにね。君が心配するようなことはないよ、彼の同意を得ての行為だし」
ロロの肩が震える。スザクは目を細めるとルルーシュが映るモニターを見上げた。たった一年一緒にいただけで、彼はこの少年の心を掴みかけているらしい。油断も隙もないとは正にこのことだろう。兄弟という肩書きがあるから今も何もないだけで、その肩書きがなくなったらどうなってしまうのか。
「……記憶は、ないのに。どうして、そんな、」
「覚えてないから、刻み付けるんだ」
「必要なくなったら殺すのに?」
「……必要なくなったら、か。だがその判断は僕にある」
「殺す気がないとでも?」
「そうじゃない。彼がゼロだという確証がないうちは、彼が逃げ出さないようにここに繋ぎとめておく必要がある」
「あなた自身がその鎖になるとでも……」
「違う」
スザクは口端を吊り上げた。彼を繋ぎとめる鎖は、あのときの電話だ。どちらに転んでも彼はこの場から離れられなくなる。最愛の妹ナナリーがスザクの手の内にあるから。スザクとナナリーが繋がっているから。自分が逃げれば妹の身が危ないと聡い彼は悟っただろう。
たとえスザクにナナリーを傷つけるつもりがなくても、否応なく皇族に戻され総督に抜擢されたのが皇帝の指示だとしても、スザクがそれを望んでいなかったとしても、ルルーシュにしてみたらそうじゃない。スザクは彼を帝国に売り渡した相手で、主君を殺したゼロを憎み、ゼロを滅ぼすためなら使えるものはすべて使う――それがルルーシュの、自分に対する認識だろう。
彼女はルルーシュを繋ぎとめる鎖にもなり、解放する翼にもなるのだ。彼がそれに気付くかは、わからないけれど。
「言っただろう? 僕たちは今まで『そう』だったんだ。記憶が戻っていないのかどうか、判断するためでもあったけれど――」
昨夜の様子が思い浮かぶ。腕で顔を隠し、スザクが与える愛撫に目を閉じて耐えていた。
力の抜き方すら忘れてしまったかのような強張った白い身体。狭い肉壁と、挿入しても萎えたままだった彼の分身。それでも、優しい言葉をかけて口付け、軽く扱いてやれば勃ちあがって蜜をこぼした。
共にというわけにはいかなかったが、スザクの手で達していた。初めてならば、他人に……しかも同性に触れられて射精するなんて、そう簡単にはいかない。誰が相手だろうと触られれば気持ちいい? そんな単純な生き物じゃない。その気になれなければ、嫌悪感が性に打ち勝てば、あんな風になるはずがないのだ。けれど。
「結局、わからなかったな。決定打にはならない。あいつは昔から、嘘が上手いから」
「……だから、今朝、あんなに」
あんなに? ロロがぽつりと落とした言葉に目線を戻す。
唇を噛んだ彼は俯いてしまっていて、言葉の先は聞けなかった。それどころか、次の瞬間にはスザクの目の前からロロは消えていて、シュン、と扉の閉まる音だけが鼓膜に届いた。
心の中にある感情はずっと漣立っていて、寄せては返す波のように一定の波形を保っていられなかった。ぶれて波打つ感情につく名をスザクは知らない。あのとき……神根島の遺跡で彼と対峙したときに感じたルルーシュへの怒りと憎しみは、この一年で燻るだけの残滓となってしまっている。
だからと言って、ルルーシュに――いや、ゼロに対する憤りは決して消えはしない。ずっと忘れていた矛盾する心。あのまま彼が目覚めなければ、……ゼロが再びこの世界に現れなければ、スザクはこの心を忘れていられた。
ゼロは排除するべき反逆者だ。皇族を殺し、日本人を唆して戦いを挑み、最悪の形でエリア11を矯正エリアへと落としたテロリスト。力に力で挑み、犠牲をものともせず、目的のためには手段を選ばなかった非道な――。
「……っ」
ガン! 握り締めた拳を寄り掛かっていた壁に打ち付ける。ブリーフィングルームには、今は誰もいない。ただ対象の様子が映し出されるモニターが暗い部屋に色とりどりの光を落としているだけ。
ゼロのことを思い出すときに出てくる言葉を、スザクは最近よく耳にする。目的のためには手段を選ばず、犠牲を厭わず、容赦のない攻撃で相手を沈黙させる、売国奴。ブリタニアの白き死神、ナイト・オブ・セブン。……スザク自身を表わす言葉。
お前はゼロと同じやり方をしているのだ――そう突きつけられているようだ。違う、とは言わない。ルルーシュがそうして己の目的を果たそうとしたように、スザクもまた目指す未来のためには手段を選ばないと決めた。ルルーシュを拘束し皇帝の前に突き出して、彼の身柄と未来を引き換えにこの地位を手に入れたときに。
ナイト・オブ・ワンになり領土をもらう。そのためなら何だってしてみせると思った。ゼロが否定した『きれいごと』で日本人の生活を取り戻してみせる。彼が目指した略奪、奪還の世界ではなく、ブリタニアに認められるやり方で手に入れてみせる。
そしてそれを、見せてやるのだ。ゼロを殺して。この世から消し去って。スザクの選んだ道を、示した世界を、彼に――ルルーシュに。
自分の歪んだ思想はきちんと理解している。ゼロとルルーシュは同じものだ。……わかっている。
けれど殺したいのは黒の騎士団のリーダーであるゼロ。ルルーシュではない。この世から消えるのは、……ゼロ、だけでいい。
だから、スザクの心は矛盾するのだ。ゼロに向ける感情は憤りと明確な殺意。だがルルーシュに向ける感情は、今は何の名もつかない。怒りも憎しみも悲しみも切なさも……何もない。
今の彼はC.C.を誘い出すための大事な餌であり、ゼロという大胆不敵なテロリストに一番近い人物。ただそれだけだ。スザクにとって、ルルーシュ・ランペルージは任務上監視しなければならない相手。どんな手を使ってでも、自分のもとに繋ぎとめておかなくてはならない相手。
そこにもまた矛盾が発生しているのだが、スザクは気付かないふりをした。気づいてしまっては、その矛盾に絡め取られ動けなくなってしまうから。
「……枢木准将?」
シュン、と小さな音がしたかと思うと、地下施設の扉が開いて小柄な人影が現れる。
「サボリですか」
中に入ってきたのは無表情のままのロロ・ランペルージだった。スザクは彼の本名を知らない。ロロという名前は生まれたときからの名なのか、それとも組織に身を委ねてからのものなのか。機情としても『ロロ』の正体は曖昧なままだった。いや、殺し屋というものは得てしてそういうものなのかもしれない。ロロという名もコードネームとして登録されている。現在の名――ランペルージはルルーシュやナナリーが偽名として使っていたものだ。彼はルルーシュの偽物の弟。血の繋がりはおろか、その内に情など存在しない。――普通ならば。
「君こそ。この時間はまだ授業中だ」
「自習になったんです」
さらりと答え返し、ロロはスザクの少し前で立ち止まると大きなモニターを見上げた。いくつかに分かれた監視カメラの映像。そのひとつに、ルルーシュのいる教室が映し出されている。居眠りもせず授業を受けているようだが、その視線はずっと窓の外へと向いていた。
「君はずいぶん、彼と仲良くなったんだな」
「え?」
スザクの問いにロロが怪訝そうに振り返った。微かな表情の変化だったが、ロロが感情を表に出すことは珍しい。ルルーシュと共にいてアッシュフォードの学生として過ごしているときはともかく、この機情の中でロロはあまり表情を変えることがなかった。
「ルルーシュはシスコンだけじゃなくてブラコンでもあったんだな」
「……。……嫉妬ですか」
スザクをじっと見つめ、ロロはそう言った。感情の見えない瞳はルルーシュと同じ紫色をしている。この少年が選ばれたのはギアス能力者だからという理由だけでなく、ナナリーと似たような髪の色と、この紫色の瞳があったからだった。
一年間、彼の愛情を一身に受けてきたのだろう。二人の様子を見ていればわかる。ルルーシュが弟に向ける視線や表情は、かつて彼がナナリーに向けていたもの。
嫉妬?
スザクは口許を歪めた。
……どちらが?
「まさか」
鼻で笑って返すと、ロロはしばらく探るようにこちらを見て……そしてふいっと視線を外した。
「確かに仲はいいですよ。そうあるべき、と……弟のあり方を僕に示したのはあなたでしょう」
「ああ。そうだったかな」
「少し、行き過ぎている気はしますが。……あの人は自分を犠牲にしてでも『弟』を……僕を助けようとした」
「自分を犠牲に?」
「オペレーション・バルハラ7号……バベルタワーで戦闘があった時ですよ。お前だけは助けてやる、そう言って笑って――僕を銃撃から庇って、爆風に煽られてタワー内部の吹き抜けに落ちた。……あのときは本当に死んだかと思った。任務が失敗すると思って、本気で心配しました」
結果的には、生きていたんですけど。
ロロは何でもないことのように、やはり無表情のままそう続ける。
「ふうん……本当に、『唯一の兄弟』みたいじゃないか」
スザクは嘲笑った。
ルルーシュが言った言葉を思い出したのだ。
俺にはもうロロしかいない――。
彼はそう言った。この世でたった一人の家族だから? 偽物だというのに?
他には誰もいない? その台詞に苛立った自分は一体何だろう。
「僕は今、ロロ・ランペルージでルルーシュ・ランペルージの弟です。あの人の弟として、お聞きしていいですか」
「なに?」
ロロがこちらを向く。視線が合った。
彼のギアスは回数制限もなく、有効範囲内にいさえすれば目を見ていなくても発動に巻き込まれる。目と目が合っても何の意味もない。だがギアスを持っている相手というのは、いつそれを発動させるかわからないため緊張感があった。この相手も例外ではない。
いくら機密情報局の者とはいえ、彼はその枠におさまりきらない部分がある。報告は聞いていた。表情ひとつ変えず、些細なことで仲間を殺害した残忍な少年。
その視線の仄暗さに、スザクは奇妙なデジャヴを感じた。
「昨夜、何があったんです?」
「……どうしてそんなことを?」
「あなたが兄さんの部屋に行ってから数時間、監視カメラが切られていた。あなたの指示でしょう。見せられないようなことでも?」
相変わらずロロの表情には何も映っていない。だがその声音には僅かな苛立ちが含まれているように感じた。隠し事をされたのが気に入らないのか、それとも……。
「昨日だけじゃない。あなたの歓迎会があった日から兄さんはおかしい。あなたを警戒しているようにも見える」
「記憶が戻っているのなら、警戒して当たり前だろう」
「あんなにあからさまな態度を? 用心深いゼロが?」
ロロの台詞に、スザクは反射的に視線を鋭くした。
「……任務にも支障をきたします。何をしようとしているんですか。兄に」
――兄、か。
スザクはそこで気付いた。この少年の瞳は、一年前の自分と似ているのだ。
彼を奪うものすべてに向けていた、獰猛な獣のようなそれ。
スザクはふっと首を竦めた。
「わかった。なら言おうか。監視を切ったのは、僕が傍にいたからだ」
「それだけ? ではないでしょう。今朝、兄さんの様子がおかしかった」
ああ。スザクは頷いて再び口を開く。
「抱いたよ。彼を。性的な意味で」
「っ!」
短い言葉で伝えると、ロロが息を呑む。
「記憶を奪う前は、それが当たり前だったから。別に何も不思議じゃない」
言葉が出ないのか、ロロは目を見開いたまま固まってしまっていた。驚き? そうじゃないだろう。震える唇はおそらく違う感情を噴出させようとしている。
「……そういうわけだ。記録に残すのはさすがにね。君が心配するようなことはないよ、彼の同意を得ての行為だし」
ロロの肩が震える。スザクは目を細めるとルルーシュが映るモニターを見上げた。たった一年一緒にいただけで、彼はこの少年の心を掴みかけているらしい。油断も隙もないとは正にこのことだろう。兄弟という肩書きがあるから今も何もないだけで、その肩書きがなくなったらどうなってしまうのか。
「……記憶は、ないのに。どうして、そんな、」
「覚えてないから、刻み付けるんだ」
「必要なくなったら殺すのに?」
「……必要なくなったら、か。だがその判断は僕にある」
「殺す気がないとでも?」
「そうじゃない。彼がゼロだという確証がないうちは、彼が逃げ出さないようにここに繋ぎとめておく必要がある」
「あなた自身がその鎖になるとでも……」
「違う」
スザクは口端を吊り上げた。彼を繋ぎとめる鎖は、あのときの電話だ。どちらに転んでも彼はこの場から離れられなくなる。最愛の妹ナナリーがスザクの手の内にあるから。スザクとナナリーが繋がっているから。自分が逃げれば妹の身が危ないと聡い彼は悟っただろう。
たとえスザクにナナリーを傷つけるつもりがなくても、否応なく皇族に戻され総督に抜擢されたのが皇帝の指示だとしても、スザクがそれを望んでいなかったとしても、ルルーシュにしてみたらそうじゃない。スザクは彼を帝国に売り渡した相手で、主君を殺したゼロを憎み、ゼロを滅ぼすためなら使えるものはすべて使う――それがルルーシュの、自分に対する認識だろう。
彼女はルルーシュを繋ぎとめる鎖にもなり、解放する翼にもなるのだ。彼がそれに気付くかは、わからないけれど。
「言っただろう? 僕たちは今まで『そう』だったんだ。記憶が戻っていないのかどうか、判断するためでもあったけれど――」
昨夜の様子が思い浮かぶ。腕で顔を隠し、スザクが与える愛撫に目を閉じて耐えていた。
力の抜き方すら忘れてしまったかのような強張った白い身体。狭い肉壁と、挿入しても萎えたままだった彼の分身。それでも、優しい言葉をかけて口付け、軽く扱いてやれば勃ちあがって蜜をこぼした。
共にというわけにはいかなかったが、スザクの手で達していた。初めてならば、他人に……しかも同性に触れられて射精するなんて、そう簡単にはいかない。誰が相手だろうと触られれば気持ちいい? そんな単純な生き物じゃない。その気になれなければ、嫌悪感が性に打ち勝てば、あんな風になるはずがないのだ。けれど。
「結局、わからなかったな。決定打にはならない。あいつは昔から、嘘が上手いから」
「……だから、今朝、あんなに」
あんなに? ロロがぽつりと落とした言葉に目線を戻す。
唇を噛んだ彼は俯いてしまっていて、言葉の先は聞けなかった。それどころか、次の瞬間にはスザクの目の前からロロは消えていて、シュン、と扉の閉まる音だけが鼓膜に届いた。
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